Sep. 14, 2022
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台湾商標協会理事長に邵瓊慧が新たに就任: 任期中の目標は「伝承と創新」
執筆:李淑蓮╱北美智権報 編集部
撮影:唐銘偉╱北美智権 メディアデザイン部
翻訳:鍾文岳╱台湾商標協会 国際事務委員会

2022年8月15日に台湾商標協会 (Taiwan Trademark Association,TTA)は第二期第一回会員大会ならびに第一次理事・監事聯席会議を開催し、元副理事長の邵瓊慧が正式に商標協会理事長に就任した。邵瓊慧は「今期の任期中の目標、方針として伝承と創新」を掲げた。「伝承と創新」とは一体どういった意味なのか、邵瓊慧に話を伺った。

邵瓊慧は台湾で初めて教育部知的財産権法の公費留学の資格を得た業界人であり、教育部の公費留学試験で1992年にはじめて知的財産権法の科目が追加された時、邵瓊慧は合格して教育部の三年全額獎学金を獲得した。彼女は当時すでに弁護士資格を有していたうえ、さらにBaker McKenzie(国際通商法律事務所)での職務経歴があったことから、ハーバード大学法学院 (Harvard Law School)に入学することができニューヨーク州の弁護士資格と法学博士の学位を取得して帰国した。豊富な学歴[註1]と経歴のバックグラウンドは邵瓊慧が台湾の早期で数少ない知的財産権法を専門とした弁護士である証であり、この業界で30年以上もの経験がある。彼女は現在全国弁護士連合会の知的財産権委員会の主任委員も務めており、知的財産権の法改正に関して招待を受けてアドバイスを行っている。

伝承と創新

邵瓊慧は知的財産権のあらゆる方面に精通した弁護士であり、執業範圍は特許、実用新案、意匠、商標、著作権をカバーし、出願、異議申し立て、訴訟などの豊富な経験がある。専門的な角度でアプローチし、商標代理人と商標の弁護士が異なる点は、前者の多くは商標出願や異議申し立て、無効審判、各国での出願状況などの前段の手続きが多いのに対して、弁護士事務所は前段の手続きのほか、商標模倣品の取り締まりや商標権侵害などの争議など多くの訴訟を担当している。

商標協会理事長に就任する前、邵瓊慧は第28期台北弁護士公会理事長を務めたことがある。商標協会の創設時の初代理事長の賴文平が2年前に商標協会の発足を準備していた時、弁護士公会の理事長の経験があり、なおかつ専門家(商標弁護士、商標代理人)の複合的な経験があることから、賴文平は邵瓊慧を商標協会の発足チームに迎え入れた。つまり、2019年の国際商標協会(INTA)のアジア太平洋地区の首席代表Seth Haysが訪問に来た時、すでに邵瓊慧は、商標協会の発足準備と初期の運営に参加し始めていた。発足の準備が完了し、商標協会が2020年に設立した後、邵瓊慧は重大任務を任せられ、台北弁護士公会の理事長を辞任し、第一期TTAの副理事長に就任した。

   

第一期TTA副理事長の就任から第二期TTA理事長に就任するまで、邵瓊慧自身がTTAの伝承の一つである。また、邵瓊慧は第二期理事・監事籌備会の主任委員であり、理事・監事の名簿を考慮する時、まず考慮したことが創新と伝承のバランスであった。

邵瓊慧によると、「伝承とは、設立時の理事・監事に引き続き貢献していただきたいという思いから、第二期理事・監事の少なくとも半分は設立時の理事・監事に留任していただいた。そして創新の面では、著名なブランドに参加していただくため、Acer、HTC、Sharpといった著名な企業の法務長を迎え入れ、より多くの台湾企業の参加につながることを期待している。

TTAが2年前に開催したイベント『大師講堂』も法制度に関する検討が主であったが、民間企業の商標に関する争議などが多いことから、今後は多くの企業の実務経験を加えていき、企業の商標に対する認識を深めることにもつなげたい考えである。学者の方面では、台湾大学法律学院の李素華教授、工研院技術移転法律中心の執行長の王偉霖教授ならびに高雄大学財経法律学科の謝国廉教授を迎え入れ、地域のバランスも両立できるよう北部、中部、南部の学者専門家が含まれており、深さと幅においてかなり多元的になっていると言える。」とのことである。

女性理事長である邵瓊慧は性別のバランスも重視しているため、第二期の理事・監事には多くの女性メンバーがいる。全体としてTTA第二期理事・監事のメンバーは、多元な職業、地域性のバランス、世代と性別のバランスが取れている。このことから、邵瓊慧は、商標協会の今後の活動が多元的に発展し、産官学の連結と交流を強化するとともに、台湾企業が実務での経験を伝えることで台湾産業の商標とブランドに対する重要性を呼びかけたいと考えている。

TTAは設立以来の核心的な任務を推進するため、各分野の機能を持つ委員会として、国際事務委員会、両岸事務委員会、商標能力認証委員会、品牌創新委員会、公益事務委員会、法制研究委員会及び組織発展委員会等が設立された。邵瓊慧は、熱意と各分野の専門性を有する主任委員らを特別招待し、TTA第一期理事・監事の基盤をもとに引き続きTTAの存在感、専門性と影響力を向上する努力をする次第である。

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台湾商標協会第二回理事会のグループ写真、写真提供:台湾商標協会

コロナ流行中は本土を中心に活動した

商標協会成立時の目標は大きく分けて4つある。 (1) 経験豊かな国際商標協会及び他国の商標団体と連携し、国際的な視野を広げる。(2) 台湾ブランドがより大きく保護される制度を提供するため、両岸の商標に関する交流を促進する。(3) 台湾商標法の制度の健全、商標の代理管理の強化。(4)台湾ブランドという新たなコンセプトの向上について企業をサポートする。邵瓊慧によると、TTAが2年前に成立してから現在に至るまで、この4つの大きな目標に変更はないものの、TTAが成立してまもなく新型コロナの影響を受けたため、過去2年間の仕事は、台湾本土で検討会を行うことが多かったが、今後は更に多元的な活動を推進し、国際交流を強化していくつもりである。

近年、台湾商標法の制度に大きな修正があり、商標代理人の専門知識及び職業倫理を強化し、委任者の権益を保護し、商標の各手続きを有効に執行できるようにする目的のため,経済部知的財産局(TIPO)は2020年に修正草案を提出し、商標代理人になる資格条件を完備し、商標主管機関が登録、管理及び授権を行えるよう関連規定を制定した。TTAの成立後、すでにこの議題についての公聴会に参加した。今後は、さらに商標代理人の専門性を向上し、権益保護の役割を担う。特に、TIPOは長期にわたって「特許、商標の両当事者が訴訟を行うこと及び救済制度の合併と簡易化」を進めてきた。この改正が通過すれば、商標の出願及び争議の手続きが大きく変化する。TTAは、関連議題の意見交流に参加するだけでなく、法改正の動向にも密接に注視しており、商標業務に携わる専門家への説明と訓練を適時に提供する。

TTAは過去2年において、台湾本土で『大師講堂』のような一連の学術交流を行い、設立時の理事長である賴文平の退任時にちょうど第10回目講義を終え「十全十美」といえる。『大師講堂』のほかに、TTAは資策会産業情報研究所(MIC)と協力してドメインネームの保護等の検討会を行った。このほか、去年(2021)は、工業総会と共同で(オンライン)両岸商標論壇を開催し、邵瓊慧は「商標のパロディ(Parody)」をテーマに講演をした。去年の両岸商標論壇時、両岸間の関係で緊張が高まっていたため民間の名義でイベントを行い、TTAは重要な任務を果たすことができた。

ポストコロナ時代からの再出発

「経験豊かな国際商標協会及び他国の商標団体と連携し、国際的な視野を広げる」ことは台湾商標協会の目標の一つである。しかし、国際商標協会INTAはコロナ禍の影響を受け、2年連続で年次会議をオンライン開催することになり、国際的な意見交流の效果も限定的である。邵瓊慧は、目下各国がコロナ禍に関する規制を緩和しつつあるため、自分の任期中に前述の4つの目標を、特に国際交流を徹底したいと述べた。また、台湾と中国間の交流について、邵瓊慧はTTAの重要な任務の一つであり、双方間の話合いと交流を続けることを期待しており、積極的に準備を整えるつもりであるが、計画は臨機応変に調整していくと強調した。

INTAは来年(2023)にシンガポールで第145回の年会を開催することを予告した。TTAは参加するだけでなく、台湾之夜(台湾ナイト)というイベントも開催する予定であり、TTAをアピールして、各国からの参加者にTTAの存在を知ってもらう狙いがある。且つ、各国からの参加者にTTAを紹介することも、来年のTTAの最も重要な目標でもある。

邵瓊慧は、TTAが今年末か来年初にINTAの2023シンガポール年会への参加及び台湾ナイトの開催について説明会を開く予定を立てており、TTAの積み重ねてきた経験を共有し、TTAによる前記イベントの開催について紹介するとともに、台湾ナイトの事前準備も進めると述べた。

なお、INTA年会の参加のみならず、TTAはINTAをプラットフォームとしてオンラインセミナー (webinar)を開催し、INTAの会員にTTA及び台湾の商標法制度を紹介する予定もある。INTA以外にも、TTAは積極的に他国の商標機構、例えば日本商標協会JTAとの交流及び訪問の機会を作ろうとしている。

台湾商標協会は民間団体であり、全国民の参加により共同で商標を重視するよう呼びかける

職業別組合や同業組合とは異なり、台湾商標協会は民間組織であり、商標専門の弁護士及び弁理士のみならず、企業、学者及び一般大衆が満20歳で会員となることができる。「同業組合」及び「労働組合」と比べれば、「協会」は自発的に参加できる組織であり、その例として、国際商標協会は17名の商人とメーカーにより1878年に創立され、参加者がいずれも商標制度を重視し、その普及に力を入れ、情熱をもって関連活動を支えてきた。TTAは草創期の非営利組織であるとは言え、小型のINTAになるべく社会の各方面からの寄付及び理事、監事らからの資金と協力の提供の下に、商標制度の発展に情熱を持っている志望者の入会を歓迎し、TTAの更なる成長を志している。

TTAの理事、監事は主に商標や知的財産権の専門家であるため、TIPOからプロフェッショナルな諮問団体として重要視されており、商標法の改正を巡って意見の提供も求められている。その上、TTAは重要な議題についてもTIPOに対し助言を行っている。要するに、TTAはプラットフォームとして、商標に関わる話合い、交流及び学習ができ、産業界、公的機関、学界、研究界より多様な人材が集まる組織である。

長期にわたって、台湾の企業、メーカーの商標が他人に先取り登録される事件が頻発する中、邵瓊慧は、国際企業が新市場に参入する時、前もって対策を完備し、競合業者や下心のある者に先取り登録する隙を与えないようにしているという国際企業での商標実務経験を共有した。それら国際企業は常に商標の登録前に入念に関連資料を検索し、手間をかけて商標の保護に取り組んでいる。特に、「台湾は先願登録主義を採用している故、その市場に参入するには、当然商標出願をしなければならない。紛争が起こった時に対処する費用より、商標にかかる費用はさほど多くない」。従って、新市場に参入するには、商標ポートフォリオと特許ポートフォリオマネジメントとして、同じく当地で商標出願したり、早期に対策を行ったりすることが必要である。今話題のメタバースでビジネスチャンスを掴むのと同様に、多くの企業が仮想世界における商標について新たな類型の商標登録と使用計画を次々と策定している。

しかし、不運にも先取り登録されてしまった場合、先使用事実があれば、先取り登録された商標を法制度により取り戻すことを専門家に相談してみるべきである。一方、デジタル化の進展と新たな技術の発展に伴い、商標の使用態様と侵害態様の多様化が進み、新ブランドも勃興している。近年、Tesla、Netflix、Spotifyといったブランドがグローバル100大ブランドに早くもランクインしたことをその例として、ブランドは企業にとって大切な資産であり、その登録、権利維持と活用によって、その価値は特許や著作権よりも劣らないことが分かる。それ故、邵瓊慧は、TTAが台湾ブランドという新たなコンセプトの向上のサポートを企業に提供し、様々な活動により商標の保護と運用上の基本観念を普及させ、より多くの企業に商標の重要性を理解してもらい、台湾ブランドの将来性を広げることを期待している。

 

備註:

 

 
 

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